第2回:コロナ終息の狂騒、乾汽船の亡霊

2026ホルムズと海運

あの日の「脳汁」を、私はまだ覚えている

「乗り遅れるな、このビッグウェーブに」

2021年から2022年にかけて、株式市場は「海運バブル」に沸き立っていました。

コロナ禍の物流停滞が生んだ運賃爆騰。

大手三社の配当利回りが10%を超え、株価ボードが連日鮮やかな赤色に染まる中、
SNSは「海運一択」「郵船はガチホ」という熱狂に包まれていました。

画面の向こうで「億り人」が次々と誕生する。

昨日まで含み損に喘いでいた人間が、一気に「勝ち組」へと駆け上がる。

その熱狂の輪の外で、私は焦っていました。

大手三社の株価はすでに高嶺の花。「今さら郵船を買っても遅いのではないか……?」

そんな時、掲示板やSNSで囁かれていた「甘い毒」が私の耳に届きました。

「次は乾汽船がくるぞ」「出遅れ海運株の筆頭だ」

それが、地獄への招待状だとも知らずに。

「出遅れ銘柄」という甘い罠

なぜ私は、日本郵船ではなく乾汽船(9308)を選んだのか。

理由は単純です。「安かったから」。そして、「まだ上がっていなかったから」です。

当時の私は、チャートの形や業績予想を分析している「つもり」でした。

しかしその実態は、自分に都合の良い情報だけを集める「願望のパズル」に過ぎませんでした。

  • 「中型株だから、火がついた時の爆発力は郵船以上だ」
  • 「まだ掲示板の書き込みも少ない。今仕込めば先回りできる」
  • 「配当だって悪くない。下値は限定的だ」

SNSの買い煽りを見るたびに、脳内には快楽物質が溢れ出しました。

「自分だけがこの宝の山を見つけた」という全能感。理性が焼き切れる音がしました。

泥沼、そして絶望

乾汽船を掴んだ直後、相場は非情な宣告を下しました。

海運セクター全体の調整が始まり、大手三社が踏みとどまる中で、
中型株である乾汽船の下落スピードは凄まじいものでした。

含み損が増えるたびに、
私はSNSで「乾汽船 ホールド」「乾汽船 買い増し」という言葉を検索し、
自分と同じ泥沼に浸かっている仲間を探しました。

「機関の振り落としだ」「現物なら負けない」

そう自分を励ましている間に、株価は「物理的な壁」を突き抜けていきました。

利益確定のタイミングは何度もあったはずなのに、「脳汁」が邪魔をして指が動きませんでした。

結果は、惨敗。 海運バブルという祭りの後に残されたのは、
ボロボロになった口座と、拭いきれない敗北感だけでした。

亡霊は、今もそこにいる

なぜ、私は負けたのか。 それは銘柄選びを間違えたからではありません。

「自分の意志」が、SNSの煽りという「外部のノイズ」に完全に支配されていたからです。

2026年、ホルムズ海峡の緊張。

今のあなたは、かつての私のように「出遅れ株」を探して、スマホの画面を凝視していませんか?

「今度は大丈夫」と、自分に都合の良いストーリーを組み立てていませんか?

もしそうなら、あなたはすでに「亡霊」に取り憑かれています。

次回、最終回。

この亡霊を成仏させ、2026年の荒波を生き残るための、私の「最終解答」を提示します。

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